相手に寄り添う対応
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
1件の顧客の重みを理解する(後編)
- 介護施設における稼働率向上実務のポイントシリーズ。
- 1件の顧客の重みを理解し丁寧にクロージングに繋げていく全3回の最終回は成約を妨げる対応例について考える。
見学や体験利用の場でお断りの理由を探していないか
本シリーズでは営業活動にける「攻め」と「守り」について、問い合わせのあった1件を大切に扱い、クロージングの成果に繋げていく考え方と方法について考えてきた。最終回の今回は、通常の営業活動の範疇で行っている取り組みの中に、実は営業成果出す妨げになりかねない例があり、そちらについて紹介を行う。
1件の問合わせ顧客を大切にする「守り」の営業にとって、問合せ後に期待を裏切られたり、失望してしまうなどして、サービスの利用意欲を削いでしまうような対応は最大限避けるべきである。しかし、実際の現場ではそれが意図せず行われていることがある。
介護サービスの問合せ顧客にとって、何が意欲を割くことになるのか。そのひとつは、自分自身もしくは自身の身内を気持ちよく受け入れてもらえないのではないか、歓迎されていないのではないかと感づいてしまうことであることは間違いないだろう。介護サービスは特に生活の中の多くの時間を割いたり、介護事業所が生活の場そのものとなる。そこに身を預けるということは、利用者にとっては私たちが想像している以上に不安を感じるものであり、それを少しでも事前に解消したいと考えと安心材料を探しに来ることが見学や体験利用の主たる目的となっているのだ。そのような場にあって、不安はありませんよ、安心してくださいと伝えられるのであればまだしも、歓迎されていないと感じられる行為があってはならないはずだが、実際にはそれが起きているのである。
その最たるものは、見学や体験利用の担当者から「アセスメント」「状態確認」と称される、内情は「お断りの理由を探すための情報収集」だ。これを行うことで、問合せ顧客は一気にサービスの利用に不安を感じてしまう。
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どのようなヒアリングが顧客の熱を冷ましてしまうのか
具体的にはどのような行為が該当するのか。その最たるものは「既往歴の確認」「現在の服薬情報の確認」あたりである。体験利用であればまだその必要性があるかも知れないが、見学対応の段階において、それはどれほど必要性のある情報だろうか。
恐らく、このような情報を聞き出す意図とは、「この病気を持っていたら対応は難しい」「この薬を持っている方は受け入れできない」というお断りの理由探しのためとなっているはずである。このような意図は必ず利用者側にも伝わっている。つまり、「病気や薬のことを聞かれたけど、正直に答えたら受け入れを断られるのではないだろうか」と不安を抱かせてしまうことになるのである。見学や体験利用が1施設だけならまだしも、複数施設あり、一方ではこのように不安を抱かせる対応があった反面、一方では「いいですよ、細かい状態のことは来ていただいてから確認しますから、まずはお困りなら一度使ってみてください」などと気持ちよく言ってもらえたらどうだろうか。おそらく、安心できる後者の方に傾くのではなかろうか。
同様に、受け入れ準備や判定に時間がかかるケースも、利用者の期待を冷やすのに十分な対応であると言える。「今」困って相談に来ているのに、考える時間が欲しいのでもう少し自宅で困っていてください、と言われるに等しい対応をされたときに、果たして気持ちよくそのサービスを使おうと思っていただけるだろうか。とにかく、困っているのであれば明日にでも来てくださいと言えるくらいの相手に寄り添う対応ができるようになると、利用者からの信頼を得られ、他施設との天秤にかけられたときに勝ち取れる対応となっていくのである。これらの対応には気を付けていくべきだろう。
次回からは、営業対応の手法の中でもより実践的な「営業トーク」の具体的な工夫について考える機会を持つ。特にトークを苦手としている方にとって必要な情報をお伝えしていく。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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